優秀な人材が集まる企業の秘密は社員幸福度にあり。社員幸福度を科学するCHOとは?

目次

社員幸福度とは、仕事に対するやりがいや幸せ感を表す指標です。社員幸福度が高いと、生産性や創造性、忠誠心などが向上し、職場だけでなく組織そのもののパフォーマンスにも好影響を与えます。しかし、社員の幸福度を高めるには、どのような取り組みが必要なのでしょうか? その答えを探すのが、CHO(Chief Happiness Officer)と呼ばれる役職です。CHOは、社員の幸福度を科学的に分析し、改善策を提案する専門家です。今回のコラムでは、CHOが果たす役割を紹介します。

1.幸福度とは何か? 

➀ 幸福度の基本概念

社員幸福度(ウェルビーイング)とは、いわゆる「働きがい」です。職場における自身の働きに対して公平な対価やポジションを得られているか、仕事で達成感や成長を実感できるか、職場で意見しても疎外されず受け入れられる安心感を感じられるか、などが当てはまります。社員満足度(エンゲージメント)と非常に似ていますが、社員満足度とは福利厚生や休暇制度、職場環境の良し悪し、給与額、労働時間などからくる「働きやすさ」を示したものになります。

➁ 職場における幸福度の重要性

個人と職場の幸福度は相互に影響し合っており、組織全体の成功にも大きな影響を与えます。組織は従業員の幸福度を重視し、働きやすい職場環境や成長の機会を提供することで、生産性やパフォーマンスが向上、仕事に対する意欲が上がり、さらに働きがいを実感するようになります。個人と組織の幸福度の関係を理解し、それぞれの要素を向上させる取り組みを行うことが、組織の持続的な成功につながると言えます。

2.幸福度と企業業績の相関関係

➀ 働きやすさと営業利益率

従業員エンゲージメントが向上すると、業績もあがるという調査結果が出ています。世界的な人事戦略コンサルティング企業であるウイリス・タワーズワトソンの調査によると、従業員エンゲージメントが高い企業と低い企業を比較すると、営業利益率に約1.5倍の差が生じるということが明らかになりました。このことから従業員エンゲージメントは企業価値や株価にも影響を与える重要な要素と言えます。

➁ 従業員幸福度と収益成長率

従業員エンゲージメントと職場文化に特化したグローバルな調査・コンサルティング会社のGreat Place to Work Instituteは、従業員満足度とビジネスの成功の関連性に関する研究を行い、毎年、米国の「働きがいのある会社ベスト100」のリストを発表しています。Great Place to Work Instituteの調査によると、従業員の幸福度やエンゲージメントを優先する企業は、収益の成長と収益性の面で競合他社を凌駕しています。例えば、2020年のリストで上位にランクインした企業の平均収益成長率は19.5%で、S&P500指数の企業の3.7%に比べ、その差は歴然としています。

➂ 社員幸福度と顧客満足度

従業員満足度や幸福度など、人事に関するさまざまなテーマについて研究を行っている人事の専門団体である米国人材マネジメント協会(Society for Human Resource Management:SHRM)の調査では、従業員の幸福度とエンゲージメントを優先する企業は、離職率が低く、生産性が高く、財務業績が良いとのことが明らかになりました。また、従業員満足度(ES)と顧客満足度(CS)の間には強い関連性があり、幸福度の高い人材は、顧客により良いサービスを提供することができると指摘しています。

3.日本人の幸福度と職場の現状

国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」(SDSN)が発表した「World Happiness Report(世界幸福度報告書)2023年版」において、日本は137か国中47位という結果でした。前年(146か国中54位)より順位は上昇するも、主要7か国(G7)では最下位。1位はフィンランド(6年連続)であり、上位は欧州勢が目立つ結果でした。

日本人の幸福度が低い理由として挙げられるのは、次の通りです。

「日本人は幸せを他人と比較して決める傾向がある」
「自己主張と自己評価が控え目な国民性」
「人生の選択に対する自由度が低い」

加えて、日本人の幸福度は年齢が増すごとに下がっていく傾向にあります。

➀ 日本における職場の幸福度

万年低順位にある日本人の幸福度ですが、上記のような国民性や文化的背景もさることながら、【日本人はなぜ不幸度を高く保てるのか?】と逆の思考をするとまた違った答えが見えてきます。

不幸自慢のメリットとは:
・話を聞いてもらえる。注目される(ような気になる)
・芯が強く、困難に立ち向かえるデキル人だと思われる(ような気になる)
・自分をわかってもらえる(ような気になる)

不幸でいることの恩恵とは:
・気を遣ってもらえる
・今すぐは変わらなくていい
・怒っていてもいい
・自分で考えなくてもいい
・責任をとらなくていい
・優しい人が自分の代わりに何でもやってくれる
・自分以外の人、状況、運のせいにできる

このように、不幸でいることのメリットも恩恵も多いことが分かります。だからこそ、不幸のもたらすメリットが習慣となり癖になっている人材は減らないのです。不幸自慢は職場全体の雰囲気や働き方、物事の捉え方の癖ともなり、業績向上どころか悪化の道へ貢献しているではありませんか。会社という組織の中で、幸福度の高い社員を抱える恩恵にいまひとつピンと来ないなら、職場に幸福度の低い人材を抱えるリスクや幸福度の低い職場環境を継続する恐ろしさに目を向ける方が、皮肉ではありますがその緊急性も重要性も実感しやすいのです。

➁ 日本の職場環境の課題と改善策

職場には、話を聞いてもらいたい、注目されたい、困難に立ち向かうデキる自分を認めてほしい。不幸自慢が癖になっている人はいませんか。彼らの本質は、裏を返せば職場の恩恵となり得る活かせる人材とも言えます。不幸でいることの恩恵に浸っている人は、職場環境が「社員幸福度の高い場所」に変化していくことで、当然ながら【居心地の悪さ】【違和感】を感じるようになるはずです。職場環境の変化は、社員に自分のために自分で考え、自分で動く、という慣れ親しんだ不幸癖からの脱却のきっかけともなり得ることでしょう。職場環境の改善は、個人の人生観をも豊かにできる可能性も持っているのです。

4.幸福度の向上で、人材の確保と離職率の低下を図る

社員幸福度が高いと、優秀な人材を確保できると言われていますが、その理由は次の通りです。

1つ目の理由は、社員幸福度が高いと、社員のモチベーションや生産性が向上するからです。社員が仕事にやりがいや楽しさを感じると、自発的に努力したり、創造的なアイデアを出したりします。また、社員同士の協力やコミュニケーションも円滑になり、職場環境がポジティブに変わっていきます。これらのことは、組織の業績や競争力にも好影響を与えます。

2つ目の理由は、社員幸福度が高いと、社員の離職率が低下するからです。社員が仕事に満足していると転職する理由が薄くなります。また、社員が長く勤めることで、組織に経験やスキルが蓄積され、人材の流出や採用コストを抑えることにもつながります。

3つ目の理由は、社員幸福度が高いと社員の口コミや評判が良くなるからです。社員が仕事に誇りや自信を持つと、自然と周りの人にも仕事の話をしたり、自社の商品やサービスを紹介するようになります。そして、社員が幸せそうに見えると、外部の人もその企業に興味や関心を持つようになり、優秀な人材の採用にも有利になります。

以上のように、社員幸福度が高いと、優秀な人材を確保できる理由は、社員のモチベーションや生産性の向上、社員の離職率の低下、社員の口コミや評判の良化など、さまざまな面で見られます。社員幸福度を高めることは、組織にとって重要な戦略の一つと言えるでしょう。

5.CHO(Chief Happiness Officer)誕生の背景と役割

CHOとは?
CHOは Chief Happiness Officerの略称であり、直訳すると「幸福担当役員」です。CHOは、従業員幸福度やエンゲージメント、ウェルビーイングを重視し、職場環境の改善や従業員の満足度向上に焦点を当てる人材です。アメリカでは、従業員の幸福度が高いと顧客満足度(CS)も高くなるという研究結果が出ており、すでに世界的なトップカンパニーでは、CHOを設置しています。CHOの設置を提唱するデリバリング・ハピネス社では、CHOの導入で売上40%増、社員定着率が90%に上昇した実績を上げています。

➀ CHO誕生の背景

CHOが誕生した背景には、従業員幸福度の重要性が認識されたこと、人材確保の難しさ、職場文化の変化などの理由があります。

近年、多くの企業は、従業員幸福度が生産性やビジネスの成功に与える影響を認識するようになりました。幸福度の高い従業員は、幸福度の低い従業員より生産的であり、創造性やイノベーションを促進します。しかし競争が激しい人材市場では、創造性がありイノベーションにあふれる、そんな優秀な人材の獲得は難しいもの。ならば、幸福度の高い人材を長期にわたり雇用し続けることが企業にとってメリットが大きく、かつ幸福度の高い人材が多数在籍することは、会社のブランディングにも繋がります。また、昨今は伝統的な職場のヒエラルキー型の文化から、よりフラットで柔軟な職場文化へのシフトが進んでいます。従業員の幸福度向上は、職場文化変革の一環として企業にとって重要な要素であるため、CHOによる手腕が求められています。

➁ CHOによる職場環境の変革

そもそも業績を上げる要因が、経営資源の充実であることは疑いようもありません。経営資源とは、人、モノ、カネの3つですが、そのうち、モノ、カネ以外の要素は人材の働き具合に依存します。さらに言えば、モノ、カネでもそれを扱うのは人材なので、経営の全ての面で【人】が重要ということになります。

CHOは、職場環境改善のツールとして心理学や行動学を取り入れたコンサルティングや科学的なアプローチで【幸福度】を診断するテストなども積極的に取り入れ、現場で活用しています。人のパフォーマンス・生産性を左右するのが、スキル、モチベーション、そしてコンディションです。社員のモチベーションが高まるのは、前向きに仕事に取り組めている時であり、そうしたポジティブ思考は幸福感によって生まれます。そして協調性や寛容力を高め、取引先や同僚などにもポジティブな影響を及ぼすだけでなく、会社のミッションに共感し、会社との関係も良好になるからです。幸福度が目に見えない感情であるために数値化が難しいという考えは、もはや過去のモノ。CHOという専門職を置いて社員幸福度アップを目標としたプロジェクトに取り組むことは、ウェルビーイング経営を促進させ、会社にとって大きなメリットになることでしょう。

6.まとめ

社員幸福度や従業員満足度は、働きがいや職場環境の向上を示します。Great Place to Work Instituteの調査では、幸福度やエンゲージメントを重視する企業は、収益成長率が高くなる傾向があります。

その理由として、従業員幸福度が高い企業は、優秀な人材を引きつけ、モチベーションや生産性を向上させるなど、多くのポイントがあります。これらの理由から、従業員幸福度の向上は企業にとって重要な戦略の一つとなっています。しかし、幸福度が高い従業員が多い企業は成長するというデータが出ているにも関わらず、日本人の幸福度は低く、社員が不幸感を共有する傾向があります。

そんな環境であるからこそ、日本企業にはCHO(Chief Happiness Officer)を配置し、従業員にとって働きがいのある組織作りを進めていくべきだと考えています。従業員幸福度の向上は、組織にとっても従業員にとっても損はなく、むしろメリットの大きいものだからです。

従業員の幸福度に対する関心は長年にわたって進化してきました。幸福度を向上させる取り組みは、組織の変化を促します。個人の成長や職場環境の改善につながるでしょう。

社員幸福度が組織を変える

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