ダイバーシティーとハラスメント~価値観の違いが招く課題と解決策~

多様な価値観やバックグラウンドを持つ人々が共に働く時代。ダイバーシティー&インクルージョンの推進は、企業の成長に欠かせない要素となっています。しかし、その実現を阻む大きな課題のひとつがハラスメントです。世代や文化の違いが誤解を生み、意図せぬ言動が職場の空気を悪化させることも。特に、昭和時代の「当たり前」だった価値観やマネジメントスタイルが、今の多様な働き方に合わず、知らず知らずのうちにハラスメントを生んでしまうケースも少なくありません。「昔はこれが普通だった」「悪気はなかった」が通用しない時代だからこそ、リーダー層の意識改革がカギを握ります。では、どうすれば価値観のギャップを埋め、誰もが働きやすい職場をつくれるのか? 本コラムでは、ハラスメントを防ぎながらダイバーシティーを活かすためのヒントを探ります。

・部下とのコミュニケーションが難しいと感じている管理職
・多様な価値観を尊重する職場環境を整えたい人事やダイバーシティ推進担当者
・ダイバーシティ経営を戦略的に推進するための指針を得たい経営者

💡こんな方におすすめです!

目次

1.ダイバーシティーが進まない理由

ダイバーシティー推進の重要性が叫ばれる一方で、日本企業では依然として「女性活躍」の遅れや「男性の育休取得率の低さ」、さらにはマネジメントスタイルの違いといった課題が見受けられます。

1-1.低水準な女性活躍推進

日本の女性管理職比率は13.2%(2021年、内閣府「男女共同参画白書」)と、諸外国と比べても低水準にとどまっています。政府は「2030年までに女性管理職比率30%」を目標としていましたが、達成には程遠いのが現状です。依然として「管理職は男性が務めるもの」という固定観念が根強く、昇進の機会や育成の場が十分に提供されていないケースが多いのです。これにより、優秀な女性人材がキャリアを諦めたり、企業を離れたりする要因となっています。

1-2.男性の育休取得率の低さ

日本の男性育休取得率は17.13%(厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」)と過去最高を記録したものの、2021年の13.97%から微増しましたが、政府目標の50%(2025年)には遠く及びません。特に管理職層が「男が育休を取るとキャリアに影響が出る」「職場に迷惑をかける」といった意識を持っていると、取得したくても管理職がネックになり取得できないのです。また、この問題はパタハラなどのハラスメントにもつながりかねません。この状況が続く限り、「育児は女性の役割」という固定観念から抜け出せず、結果として女性のキャリア継続を難しくする要因にもなります。

1-3.抜けない昭和の価値観

ダイバーシティーを推進するには、多様な価値観を受け入れる柔軟なマネジメントが求められます。しかし、依然として「長時間働ける人が評価される」「上司の指示に従うのが当たり前」といった昭和的なマネジメントスタイルが根強く残っている企業も見受けられます。多様な働き方を取り入れるとして、リモートワークやフレックスタイム制度を導入しても、実際には「職場にいる時間=仕事の成果」と見なされる文化が変わらない限り、多様な働き方を許容する環境は整いません。


これらの課題を解決しない限り、ダイバーシティー推進は表面的なものにとどまり、真のインクルージョンにはつながりません。

2.昭和的価値観がダイバーシティー推進を妨げる

2-1.ダイバーシティーが進まない組織が抱える課題

日本企業の多くには、今なお「男性優位の文化」「長時間労働の美徳」「上下関係の絶対視」といった昭和的価値観が根強く残っています。これらの価値観はパワハラやセクハラの原因にもなります。やっかいなことに、この価値観のもとでキャリアを築いてきた現在のリーダー層は、自らの経験を基にマネジメントを行う傾向があり、その結果としてダイバーシティー推進が遅れる要因となっています。

例えば、「リーダーは男性が務めるべき」という暗黙の前提が残る職場では、女性や多様なバックグラウンドを持つ人材が意思決定層に上がる機会が制限されがちです。また、「長時間働くことが努力の証」という考え方が根付いた環境では、家庭やライフスタイルの事情を抱える人が活躍しにくくなります。さらに、「上司の指示には絶対従うべき」という上下関係重視の文化は、異なる視点を持つメンバーの意見を封じ込め、組織の柔軟性を奪う要因になります。

これらの価値観が変わらない限り、ハラスメントは後を絶たず、表面的にダイバーシティーを推進しようとしても、組織風土は変わりません。リーダー層が「これまでのやり方が正しい」と考え続ける限り、多様な人材の活躍を阻む無意識のバイアスが働き、結果として組織の競争力を損なうことになります。

2-2.ダイバーシティーを妨げる多様なハラスメント

職場におけるハラスメントは依然として大きな課題です。パワハラ、セクハラ、モラハラなど、多様な形態のハラスメントが組織内で発生し、ダイバーシティー&インクルージョンを妨げています。

パワハラは、過度な叱責や威圧的な態度などが典型的な例です。異なる価値観や文化を持つ社員が増えることで、管理職が「従来のやり方」に固執し、柔軟な働き方を認めないケースも見られます。これにより、社員が萎縮し、意見を言いにくい雰囲気が生まれます。

セクハラについても、ジェンダーバイアスが昇進や評価の場面で不公平な扱いを生むことがあります。また、国籍や宗教、障がいの有無を理由としたモラハラも、ダイバーシティー推進の障壁となっています。こうした状況が続くと、社員の心理的安全性が損なわれ、職場のコミュニケーションが減少し、離職率の増加を引き起こす可能性があります。

2-3.事例紹介

ここでは、ハラスメントが企業文化やダイバーシティー推進に与えた影響を示す事例を紹介します。

失敗事例:ハラスメントによる企業イメージの低下

ある企業では、管理職によるパワハラが常態化し、社員のメンタルヘルスに悪影響を与えていました。特に、多様な価値観を持つ社員が増える中で、従来の厳格な指導スタイルが「押し付け」と受け取られ、新入社員の離職率が急上昇しました。さらに、SNS上で内部告発が広まり、企業の評判が著しく低下しました。結果として、優秀な人材の確保が難しくなり、ダイバーシティー推進どころか組織の活力が失われてしまいました。


成功事例:ヤマト運輸のハラスメント対策

ヤマト運輸では、従業員が安心して働ける環境を整えるために、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策を強化しました。具体的には、従業員が理不尽なクレームや暴言を受けた場合に会社が適切に対応できるよう、専用の相談窓口を設置し、マニュアルを整備しました。また、顧客に対しても「適切な対応を求める」姿勢を明確にし、従業員の心理的安全性を高める取り組みを行いました。その結果、従業員の満足度が向上し、企業全体の生産性やサービス品質の向上にもつながりました。


これらの事例からも分かるように、ハラスメント対策を怠ると企業に深刻なダメージをもたらします。一方で、適切な対策を講じることで、ダイバーシティーを活かした活気ある職場を実現できるのです。

3.ダイバーシティー推進策①:リーダー層の意識改革

3-1.従来の価値観を変える

ダイバーシティー&インクルージョンを実現するためには、管理職や経営層が従来のマネジメントスタイルや昭和的な価値観から脱却することです。特に、従来の年功序列やトップダウン型の意思決定プロセスは、ハラスメント防止や女性活躍の観点が十分に浸透せず、多様な意見を活かしにくい要因となっています。例えば、異なるバックグラウンドを持つ社員が増える中で、柔軟な働き方や多様な価値観を尊重しない企業は、優秀な人材を引き留めることが難しくなります。リーダー層が率先して新しい価値観を受け入れ、職場環境を変革していくことが求められます。

3-2.意識の変化がもたらすメリット

リーダー層が意識を変え、ダイバーシティーが浸透すると、企業にはさまざまなメリットがもたらされます。その中でも特に重要なのが、企業の競争力強化、社員のモチベーション向上、そしてイノベーション創出です。

まず、ダイバーシティーが浸透することで、企業の競争力が高まります。異なるバックグラウンドや価値観を持つ人材が活躍できる環境を整えることで、多様な視点を取り入れた意思決定が可能になります。これにより、グローバル市場での適応力が向上し、新たな市場開拓やビジネスチャンスの創出につながります。

次に、社員のモチベーション向上も期待できます。ダイバーシティーが浸透した、個々の価値観やライフスタイルが尊重される職場では、社員は自分の能力を最大限に発揮しようとします。これにより、働きがいのある職場環境が生まれ、離職率の低下や生産性の向上にもつながります。

さらに、イノベーションの創出も大きなメリットの一つです。異なる文化や視点を持つ人材が協働することで、新しいアイデアが生まれやすくなります。多様性があるチームは、従来の発想にとらわれない柔軟な思考を持ち、革新的な商品やサービスの開発につながる可能性が高まります。

このように、リーダー層が意識改革を行い、ダイバーシティーが浸透することで、企業全体の成長と発展が促進されます。持続可能な経営を目指す上で、ダイバーシティーの推進は不可欠な要素であり、そのためにはリーダー自身が率先して取り組む姿勢が求められます。

3-3.具体的な意識改革のステップ

リーダー層の意識を変えていくためには、いくつかのステップを踏むことが重要です。以下に、意識改革を進めるためのアクションをいくつか提案します。

まず、インクルーシブなマネジメントスタイルを取り入れることが必要です。すべての社員が自分の意見を自由に表現できる環境を整え、積極的に意見を取り入れることで、ハラスメントは減り、多様な価値観を尊重する組織文化を築くことができます。また、リーダー自身が率先して多様な視点を学び、対話を重視する姿勢を持つことが求められます。

次に、フラットな評価制度の導入が効果的です。多様な背景を持つ社員が公平に評価される仕組みを作ることで、能力や成果に基づいた適正な評価が可能になります。例えば、チームワークや創造性といった要素を評価基準に加えることで、異なる強みを持つ社員が活躍しやすくなります。

さらに、ダイバーシティー研修を実施し、無意識のバイアスに気づく機会を設けることも重要です。リーダー層が自らの価値観や考え方を振り返り、より開かれた視点を持つことで、職場の多様性を尊重する文化が醸成されます。

このような取り組みを積み重ねることで、リーダー層の意識改革が進み、ハラスメントが減少し組織全体のダイバーシティー推進が加速します。企業が持続的に成長するためには、こうしたアクションを継続的に実践していくことが重要です。

4.ダイバーシティー推進策②:管理職研修

4-1.管理職研修の重要性

前出の通り、ハラスメントを防止し、ダイバーシティーを推進するためには、管理職の意識改革が不可欠です。管理職は組織の価値観を体現し、部下に大きな影響を与える立場にあるからです。そのため、定期的に管理職研修を実施することをお勧めします。管理職研修は、組織の未来を左右する重要な投資です。管理職が率先してダイバーシティーを推進し、ハラスメントのない環境を築くことで、企業全体の成長と持続可能性を高めることができます。

管理職研修のプログラムの一例として、ダイバーシティーの基本概念を学び、異なる価値観を持つ人々と協働するためのコミュニケーションスキルを習得します。無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)を認識し、公平な職場環境を作ることが可能となります。また、ハラスメント防止に関しては、具体的なケーススタディを通じて、どのような言動がハラスメントに該当するのかを理解します。時代とともに変化する基準を学び、適切な対応方法を身につけることで、管理職としての責任を果たせるようになります。さらに、研修ではロールプレイを活用し、実際の職場で起こりうるシナリオに基づいた実践的なトレーニングを行います。これにより、理論だけでなく、現場で即活用できるスキルを習得できます。

4-2.研修による企業文化の変革

実際に管理職研修を実施した企業の事例を紹介します。

まず、あるIT企業では、管理職を対象としたダイバーシティー研修を実施した結果、職場内の価値観の違いに対する理解が深まりました。この企業では、研修後に管理職がチームメンバーの多様なバックグラウンドを尊重し、異なる意見を受け入れるようになりました。また、研修をきっかけに定期的なフィードバックの場が設けられ、職場内でのハラスメントの早期発見と対応が可能となりました。この結果、職場の雰囲気が大きく改善され、従業員満足度が向上しました。

次に、とあるメーカーでは、管理職研修を通じて、ダイバーシティーに対する偏見やステレオタイプに対する意識改革が進みました。研修では、実際の事例を基にしたロールプレイやグループディスカッションを行い、管理職が具体的なハラスメントの事例にどのように対応すべきかを学びました。その結果、ハラスメント防止に関する社内ルールが強化され、研修を受けた管理職がリーダーシップを発揮して職場文化の改善を牽引するようになりました。

これらの事例に共通するのは、管理職研修が単なる知識の習得にとどまらず、企業文化の根本的な変革に寄与している点です。研修を通じて、管理職が自らの行動を見直し、ダイバーシティーを尊重した職場づくりを推進することが、最終的な成功に繋がっています。

5.ダイバーシティー推進のためのアクションプラン

ダイバーシティー推進とハラスメント防止の取り組みを進めるための、具体的なアクションプランを提示します。管理職は企業文化の鍵を握る存在だからこそ、まずは管理職向けの研修をしっかりと行い、その後は組織全体での意識改革を進めることが重要です。では、実際に企業が取り組める実践的なステップをご紹介します。

5-1.管理職向けワークショップの実施

管理職が変われば、職場の文化も大きく変わります。だからこそ、管理職向けのダイバーシティーとハラスメントに関するワークショップは必須です。これを定期的に実施することで、管理職は自分の役割を再認識し、現場での具体的な問題解決に向けたスキルを磨くことができます。例えば、研修内容としては次のようなものが効果的です。

  • ダイバーシティーの基本的な理解とその重要性
  • ハラスメントを未然に防ぐための具体的な対応方法
  • 異なる文化や価値観を尊重するためのグループディスカッションやロールプレイ

これらを実施することで、管理職がダイバーシティーを積極的に推進し、部下との信頼関係を深める手助けとなります。

5-2.フィードバックを受ける仕組みの構築

管理職だけでなく、全従業員が声を上げやすい環境づくりも欠かせません。従業員からのフィードバックは、組織の問題を早期に発見し、改善するための貴重な情報源です。そこで、企業内でフィードバックを受ける仕組みをしっかりと構築しましょう。
例えば、以下の方法を取り入れることができます。

  • 定期的な1on1ミーティングの実施
  • 匿名で意見を提出できるオンラインフォームや相談窓口の設置
  • 社内アンケートや従業員満足度調査を通じて、職場の現状を把握

フィードバックを受け入れる姿勢を企業として示すことで、社員の信頼を得ると同時に、職場内での問題や課題を早期に解決できるようになります。

5-3.ダイバーシティー推進の目標設定と進捗確認

最後に、ハラスメントを防ぎ、ダイバーシティー推進をさらに加速させるためには、具体的な目標設定が欠かせません。目標を設定し、進捗を定期的にチェックすることで、取り組みがどれだけ効果的に進んでいるかを確認できます。
例えば、こんな目標を立ててみるとよいでしょう。

  • 「全従業員の80%以上がダイバーシティー研修を受ける」
  • 「年内にハラスメントに関するクレームの発生件数を50%削減」

目標が具体的であればあるほど、従業員一人ひとりの意識も高まり、取り組みの効果を実感しやすくなります。

6.まとめ:リーダー層の意識改革が企業文化を変える

ダイバーシティー推進を実現するためには、まずリーダー層の意識改革が不可欠です。リーダーが従来の価値観から脱却し、柔軟で多様な価値観を受け入れる姿勢を示すことで、ハラスメントが減り、企業文化が変革され、社員が活躍できる環境が整います。リーダー層が率先して変化を引き起こすことで、組織全体にポジティブな影響を与えることができます。

また、管理職研修を受けることは、この意識改革を促進する重要なステップです。研修を通じてリーダー層は、自身のマネジメントスタイルを見直し、より包括的で公平な職場環境を作るための具体的な知識とスキルを習得できます。研修後は、社員の信頼を得やすくなり、企業文化が一新されることで、生産性向上や離職率の低下などの成果が期待できます。

最後に、今すぐにでも管理職研修の申し込みを行い、組織の変革を始めましょう。カルチャリアでも、ダイバーシティーやハラスメントに関する研修を提供しております。お気軽にお問い合わせください。

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