5月病対策、組織がやるべき3つの施策
目次
あなたの周りに、なんとなく元気がない人や、以前と比べるとミスが目立つようになった人はいませんか?もしかしたら、彼らの症状は5月病の兆候かもしれません。5月病は放置すれば離職や休職、さらには職場全体のパフォーマンス低下を招く深刻な組織課題です。社員の不調を「自己責任」とせず、新入社員を含むすべての社員のメンタルヘルスケアとモチベーションを守るために、組織として5月病対策に取り組むことが必要です。本記事では、経営者・人事担当者が今すぐ実践できる5月病対策の具体的な3つの施策を紹介します。5月病対策で社員の健康を守ることは、離職防止やエンゲージメント向上に直結し、組織全体の持続的な成長につながります。
1.これは5月病対策が必要?組織でよく見られる社員の変化
1-1.組織あるある1『新卒社員の不安とプレッシャー』
佐藤さんは、IT部門に新卒として入社したばかりです。新入社員研修が終わり、配属先での実務が始まりましたが、先輩から指示された業務をきちんとこなせているかどうか不安にかられるようになりました。「本当にこのやり方で良かったのか」「自分には向いていないのではないか」と気づけば休みの日でも、不安で自問自答することが多くなり、食欲も落ちてしまいました。
1-2.組織あるある2『異動してきたばかりの中堅社員』
木村さんは、マーケティング部門の中堅社員です。以前はインサイドセールスを担当していましたが、4月1日付で部署異動になりました。新しいチームで皆の足を引っ張らないよう、自分の役割を果たそうと必死に仕事をしてきました。しかし、ゴールデンウィークが終わり通常業務に戻ると、以前ほど集中力が続かず、些細なミスを繰り返すようになったのです。「なぜこんな簡単なことを間違えるんだろう」と、どんどん自分を責め、周りに相談することもできず、日々の業務に追われています。
1-3.組織あるある3『ストレス過多のベテラン社員』
田中さんは、営業部門のベテラン社員で社内でも頼りにされています。しかし、最近は朝の通勤途中で「また今日も仕事か」と感じるようになっていました。数か月前にあまりのストレスと忙しさに心身の調子を崩し、以降は営業成績が落ち込んでいます。上司も忙しく、自身のメンタルが不安定であることを報告をするタイミングもなく、このままでは大事になるのではないかという不安を抱えながら、日々を過ごしています。
2. 5月病とは?経営リスクとして捉えるべき理由
5月病の影響を受けることで、組織全体の生産性が低下することは避けたい問題です。ここでは5月病が組織にどのような影響を与えるかを考えていきます。
2-1. 5月病の定義
5月病は、新学期や新生活が始まった4月からの疲労と、ゴールデンウィークなどの長期休暇による生活リズムの変化が重なり、5月の連休明け頃に心身のバランスを崩すことで現れる一連の不調を指します。医学的には、環境の変化にうまく適応できないことで生じる一種の適応障害として捉えられます。新しい環境下でストレスや疲労が蓄積し、連休によって一時的に解放的な状態になった後、日常生活への再適応がうまくいかないために起こる不調であり、下記のようなさまざまな症状が現れやすくなります。
精神的な症状
- 意欲の低下、無気力
- 憂うつな気分、落ち込み
- 不安感、焦り
- 集中力、判断力の低下
- イライラしやすい
- 趣味や好きなことへの興味の喪失
身体的な症状
- 倦怠感、疲れやすい
- 不眠(寝つきが悪い、夜中に目が覚めるなど)
- 食欲不振
- 頭痛
- めまい
- 動悸
- 腹痛、便秘など
精神的な症状 | 身体的な症状 |
---|---|
意欲の低下、無気力 | 倦怠感、疲れやすい |
憂鬱な気分、落ち込み | 不眠(寝つきが悪い、夜中に目が覚めるなど) |
不安感、焦り | 食欲不振 |
集中力の低下、判断力の低下 | 頭痛 |
イライラしやすい | めまい |
趣味や好きなことへの興味の喪失 | 動悸、腹痛、便秘など |
2-2. 5月病の原因と影響範囲
5月病と聞くと、新社会人が陥りやすいものと連想する方も多いかもしれません。しかし、新社会人だけでなく、中途で入社したばかりの人や既存社員にも影響が及ぶことを忘れてはなりません。日本企業の多くでは4月から新年度が始まります。年度の変わり目で心機一転、新しい職場に転職してきた人や新しい部署に異動した人は、新たな仕事を覚える必要があったり、新しい人間関係を築いたりすることが求められます。こうした人間関係のストレスや慣れない仕事への不安に加え、ゴールデンウィークによる生活リズムの変化が重なるため、新社会人だけでなく、既存社員も5月病に陥るリスクが十分にあるのです。
2-3.経営リスクとしての5月病
5月病は個人の問題にとどまらず、組織全体の経営リスクにも直結します。特に新入社員や若手社員の休職が相次ぐことで、人員配置の見直しや業務負担の偏りが生じ、チーム全体のパフォーマンス低下を招きます。さらに、5月病対策を怠った組織では、早期離職や定着率の低下が進み、採用・教育コストが無駄になる事例も見受けられます。原因としては、過度な期待や不明確な職務内容、ケア不足が挙げられ、これらが社員の心理的安全性を脅かします。したがって、経営層はヘルスケアの視点を取り入れたマネジメントを行い、五月病対策として定期的な面談や相談会の開催、相談窓口の整備といった手を講じる必要があります。5月病対策 組織の取り組みは、予防と防止の両輪が欠かせず、経営の安定に直結する重要課題といえるでしょう。
3. 5月病の原因と、陥りやすい人や組織の特徴
5月病は、個人の性格や適応力だけでなく、職場の環境要因も大きく影響して発症することがあります。
3-1. 5月病を招く2つの要因:ストレス型と理想と現実のギャップ型
5月病を引き起こす要因は大きく分けて「ストレス型」と「理想と現実のギャップ型」の2つに分類できます。組織としてこの2つの要因をしっかりと把握し、対策を講じることが重要です。
ストレス型
ストレス型は、仕事の負担や人間関係などのストレスが蓄積されることで発症します。特に職場の環境やマネジメントが影響を及ぼすことが多く、社員の心身に大きな負荷をかけます。過重労働や長時間労働が続くと、休職に追い込まれることもあり、組織全体のパフォーマンス低下を招く原因となります。これを防ぐためには、ヘルスケアやメンタルケアの体制を整えることが求められます。
理想と現実のギャップ型
理想と現実のギャップ型とは、新入社員や転職してきたばかりの社員が、期待していた職場環境との違いに直面することで生じるものです。組織内のコミュニケーション不足や業務の難易度、職場文化に適応できないと感じることが原因で、精神的に疲弊してしまいます。このようなギャップを埋めるためには、ビジョンの共有や定期的なフィードバックが不可欠です。
3-2. 5月病に陥りやすい人の特徴
一般的に、以下のような特徴を持つ社員は5月病になりやすい傾向があると言われています。
真面目で責任感が強い人
- 与えられた職務を完璧にこなそうとし、無理をしてでも成果を出そうとする傾向がある
- 小さなミスでも自分を責めやすく、周囲に助けを求めることが苦手
- 結果として業務負担や心理的プレッシャーが蓄積し、心身の不調につながるリスクが高い
内向的でストレスを抱え込みやすい人
- 自分の悩みや不安を周囲に打ち明けることに抵抗を感じ、問題を一人で抱え込みやすい
- 相談できる人がいない、もしくは相談のきっかけがないまま限界を迎える恐れがある
- 周囲が積極的に声をかけ、安心して相談できる場づくりが重要
環境の変化に敏感な人
- 新しい人間関係や職場文化、仕事内容の変化に強い不安やストレスを感じやすい
- 小さな変化にも過剰に反応し、適応に時間がかかることで自己効力感を失うことがある
- 段階的な環境適応の支援や、必要に応じたフォローアップが求められる
理想が高い人
- 自分自身や組織、職場環境に対して高い基準を求め、現実とのギャップに失望しやすい
- 目標未達や理想通りにいかない状況に対して強い無力感や自己否定感を抱くことがある
- 理想の調整や期待値の共有、成功体験を積み重ねるマネジメントが重要
社員を5月病から守るためには、日頃からのマネジメントやヘルスケア体制の充実、5月病対策の一環としての研修開催も必要です。組織全体で原因を理解し、予防と防止のための具体的な手を打つことが、持続的な5月病対策につながります。
3-3. 5月病対策が必要な組織体制や職場環境の特徴
5月病は決して本人の問題だけではありません。次のような組織体制や職場環境も、社員の5月病発症リスクを高める可能性があります。
過度な業務量とプレッシャー
- 繁忙期や新入社員受け入れ時の業務過多が、社員の心身に大きな負担を与える
- 過度な責任感や短期間での成果要求が、プレッシャーとなり5月病の原因につながる
- 労働時間が長く、休息日が確保されない職場ではリカバリーが難しい
コミュニケーション不足と孤立感
- 上司や同僚との対話が少ない職場は、相談機会が減り孤立感を深める
- 新入社員や異動者が組織に馴染めず、支援を受けられない状況が続く
- オンライン中心の勤務環境で、会話や雑談が生まれにくい
不明確な評価制度やキャリアパス
- 目標設定や評価基準が曖昧で、頑張りが報われない感覚に陥りやすい
- 将来のキャリアが見えず、成長の実感を得られないことで意欲が低下する
- 上司とのキャリア面談がなく、自分の進路を相談する機会が少ない
ハラスメントの存在
- 上司や同僚、部下からの逆ハラスメントなどが心の負担となり、職場への不信感を生む
- ハラスメントを訴えても改善されない組織風土が、心身の不調を悪化させる
- 被害を相談できる窓口や保護体制が不十分で、問題が放置されやすい
サポート体制の不足
- 社内の相談窓口やメンタルヘルスケアの仕組みが整備されていない
- 管理職やリーダーがメンタルヘルスに関する知識・意識を持たない
- 早期兆候に気づき、適切な手を打つための研修や事例共有の場が不足している
このように、5月病は個人の要因だけでなく、職場の文化や制度、人間関係など、さまざまな環境要因が複雑に絡み合って発症します。そのため、企業側も働きやすい環境づくりに取り組むことが重要です。
4.組織が取り組むべき、3つの「5月病対策」
4-1. 5月病対策その1:経営理念・ビジョンの浸透
5月病対策を組織として取り組むには、社員一人ひとりが会社の目的やビジョンを理解し、自分の役割を再確認できる環境を作ることが重要です。特に、社員が「自分が何のために働いているのか」と感じられない場合、5月病の症状が悪化する原因となります。経営理念やビジョンの浸透が不足していると、社員が目的喪失感を抱き、業務に対するモチベーションが低下することがあります。
そのため、組織としては、定期的に経営理念やビジョンを社員と共有し、職場の一体感を高めることが必要です。例えば、社内で定期的にビジョン共有のためのミーティングやワークショップを開催することが効果的です。こうした取り組みによって、社員は自分の仕事が組織全体の目標にどのように貢献しているのかを理解しやすくなります。
また、社内コミュニケーションを工夫することも有効です。例えば、オンラインのチャットツールや定期的な1 on 1のフィードバックセッションを活用して、社員との距離を縮め、悩みや不安を早期に把握することができれば、5月病対策としての予防にもつながります。組織として、社員のケアを意識的に行い、エンゲージメントを高めるための施策を徹底することが、休職防止やパフォーマンス向上につながります。
4-2. 5月病対策その2:リーダー・マネージャーの育成
組織としての5月病対策において、リーダーやマネージャーの役割は非常に重要です。リーダー層が社員と積極的に対話することで、5月病の予防に大きな効果を発揮します。例えば、定期的な「1on1面談」や「メンタリング」を通じて、社員の気持ちや悩みを聴く機会を増やすことが、組織全体の心理的安全性を高め、社員のエンゲージメント向上に繋がります。
特にミドル層のリーダーは、心理的安全性を創出する役割を担うべきです。ミドル層は、上層部からの指示を実行するだけでなく、現場の声を上層部に届ける橋渡しの役割も果たします。彼らが心理的安全性を意識したマネジメントを行うことで、チームメンバーは自分の意見を安心して言えるようになり、ストレスを軽減できます。
また、リーダー層が率先して社員のケアを行うことで、社員の仕事に対するモチベーションが向上し、休職や離職を防ぐ効果も期待できます。組織として、リーダーとマネージャーの対話力やマネジメントスキルを高める施策を導入することが、5月病対策を成功させるための大きな一歩となります。
4-3. 5月病対策その3:ストレスマネジメントの推進
5月病対策において、ストレスマネジメントを推進することは組織全体の健康を守る重要な施策です。特に社員のストレスを早期に発見し、適切に対応する体制を整えることが、予防や休職防止に繋がります。まず、社内研修やカウンセリング体制を整備し、社員が気軽に相談できる環境を作ることが大切です。これにより、ストレスや不調の兆候を早期に把握し、早期対応が可能になります。
次に、社員が「早期兆候」を自覚しやすい環境を作り、その後に「相談しやすい場」を提供する流れを確立しましょう。これにより、社員は自分の心身の不調を感じた際に、ためらうことなく相談でき、組織として適切な支援を行うことができます。特に、新入社員や中堅社員に対して、ストレスケアの重要性を伝えることが効果的です。
さらに、社員の心身のケアに対する取り組みを全社員に定期的に伝え、予防の意識を高めることも重要です。適切な支援制度を設けることで、社員のストレスを軽減し、仕事の効率や職場のエンゲージメントを向上させることができます。このようなストレスマネジメントの施策は、5月病対策の一環として組織にとって必要な仕組みです。
5.まとめ:5月病対策で強い組織づくりを!
5月病は、社員一人ひとりの心身の健康に影響を与えるだけでなく、組織全体のパフォーマンスにも大きな影響を及ぼします。このため、組織としてしっかりと対策を講じることが重要です。新卒社員や異動したばかりの社員、長年働いているベテラン社員の心の状態に目を向け、適切なサポートを提供することで、安心して働ける環境を整えましょう。
まず、経営理念やビジョンの浸透を図り、社員が自分の役割を再認識できるようにするとともに、リーダーやマネージャーの育成を進めてください。彼らがしっかりと社員をサポートできるようになれば、職場全体の雰囲気が良くなります。また、ストレスマネジメントを推進することで、社員一人ひとりが自分のストレスを適切に管理できるようにします。
これらの対策を通じて、社員が健康で意欲的に働ける環境を作ることが、結果的に強い組織づくりにつながります。まずは、組織の現状を正確に把握し、5月病に関連するリスクを見極めることが重要です。その上で、実践的な対策を講じることが、効果的な組織づくりへと繋がります。
弊社では、現状把握から現状分析、具体的な対策の実行まで、貴社の組織課題に合わせたトータルサポートを提供しております。お気軽にご相談ください。
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