マミートラック回避の鍵は幸福度!ワーママが直面する問題と解決策

昨今、日本でもよく聞くワードとなった「マミートラック」。皆さんはご存じでしょうか?マミートラックとは、職場復帰をした女性従業員が、昇進や昇格を諦めざるを得ない状況のことです。今の日本では、18歳未満の子どもがいる世帯の母親が仕事をしている割合が75.9%と、仕事と家庭を両立することは当たり前になりました。しかしマミートラックに該当する女性は、全体で46.6%というデータもあり、現代の日本はワーキングマザーにとってベストな環境とは言えないようです。このコラムでは、マミートラックとは何なのか、その背景や原因、個人や企業への影響、対応策などを解説します。

・働くママ: 仕事と家庭を両立しながらキャリアを築くためのアドバイスを探しているワーキングマザー。
・人事担当者: 社内の女性従業員の幸福度向上とキャリア支援に取り組みたい人事担当者やマネージャー。
・企業経営者・管理職: マミートラックの回避策や職場の多様性とインクルージョンの向上を目指す企業経営者や管理職。

💡こんな方におすすめです!

目次

1.マミートラックとは?

「マミートラック」(または「マミートラッキング」)とは、産休や育児休業を取得した後、女性が職場で昇進やキャリアの発展において障害を受けることを指す用語です。略して「マミトラ」と言われることもあります。陸上競技のコース「トラック」に由来した言葉で、「出世無しの子育て母コース」に乗ったらそのまま出られなくなるという意味があります。

例えば、女性は産休・育休を経て職場に復帰した際に、子育てを理由に産休・育休前とは違う単純業務しか与えられない、その代わりに仕事と子育ての両立ができることとの“暗黙の引き換え”として、昇進・昇格は諦めざるを得なくなるのです。

2.マミートラックの背景

2-1.マミートラックの起源

アメリカでも同様にMommy Trackと言われ、同じ問題として存在しています。もともと、マミートラックは1988年にアメリカで生まれた言葉で、NPOカタリスト初代代表、フェリス・シュワルツ氏が、出産後の女性を「キャリア優先」と「キャリア+家族」に分け、「キャリア+家族」を選ぶ女性に一時的な対応措置を施すよう企業などに求め、ジャーナリストがこれを「マミートラック」と名付けたのが始まりです。これがマミートラックの起源であり、もともとは育児と仕事の両立を望む女性に、育児休暇などの制度を整備することを目的とするポジティブなワードとして使われていました。しかし今の日本では、ネガティブなワードとなり、女性の社会進出を阻むものとして一般的に使われています。日本の場合はまだまだ「女性活用」の歴史も理解も浅く、その対応も初期レベルと言えるでしょう。

2-2.マミートラックを引き起こす原因とは

●アンコンシャスバイアス(思い込み)
マミートラックの原因の一つに、企業や社会の思い込みが挙げられます。女性従業員の考え方やスキルに関わらず、「子育てをしている」という側面のみで業務や役割を決めつけてしまう風土も、マミートラックを生んでいます。「子育て中だから、仕事量を減らした方がいい」「役職は荷が重い」「残業ができないから責任ある仕事はできない」「子どもの体調不良で仕事を抜ける可能性がある」というような思い込みが、働く女性のキャリア向上を妨げ、マミートラックを引き起こします。こうした思い込みや偏見はアンコンシャスバイアスと呼ばれ、子育て中の女性だけでなく、職場に多くの悪影響があります。

ワーキングマザーへのアンコンシャスバイアスが生まれてしまう原因として、日本の男女の家事負担、育児負担の偏りが挙げられます。2021年度の総務省の調査では、女性の家事関連時間は7時間28分、男性は1時間54分と、女性の家事育児負担は男性の3.9倍です。それに加え、男性の家事育児時間は1976年の調査開始以来、もっとも長くなっているというのです。女性が4倍も負担しているにもかかわらず「最長」とは、日本社会のダークサイドが垣間見える結果でした。

●「子育ては母親」という固定概念
日本には、いまだに「子育ては母親」という意識が根強く残っています。家庭、職場、社会に浸透しているこの意識は、母親本人にも植え付けられている可能性もあります。このような事情から、ワーキングマザーは本来すべき「育児」に加え、仕事もしていると「好きで働いているのだから多少我慢すべき」「子育てのために、なるべく仕事の負担を減らすべき」というような偏った考えが生まれているのです。

また、長時間労働を良しとする古い感覚を持つ会社の場合、時短や残業をしない女性は、仕事のパフォーマンスに関わらず「会社に貢献していない」というレッテルを張られてしまうこともあります。このような社会風土から、女性に対する偏見が生じています。マミートラックの原因は、間接的な原因もあわせて、さまざまな要因が重なって生まれているのです。

●上司とのコミュニケーション不足
上司が女性部下を思いやる気持ちから仕事を減らしたり、責任の重い仕事を与えないなど、お互いの状況や気持ちを誤解するところから、マミートラックが生まれます。このとき、上司は決して女性の部下に嫌な思いをさせたいとは思っておらず、むしろ配慮したのに、結果的にマミートラックになってしまうというケースもあります。配置転換や業務の変更はありがたいと感じる女性従業員もおり、判断が非常に難しいですよね。だからこそコミュニケーションが重要になり、不足するとこのような結果になってしまいます。

3.マミートラックが与える影響

3-1.個人に与える影響

個人に与える影響は以下の点が挙げられます。
    
●女性のキャリア形成が困難になる
マミートラックによって昇進や昇格の機会が奪われ、女性のキャリア形成が難しくなります。

●モチベーションの低下
昇進、昇格ができないことを前提で働かなければならず、向上心が失われます。そして評価が「子育て中」や「時短勤務」という側面で評価されてしまうので、自身のスキルや能力、結果を正当に評価されていないと感じ、会社への不満がたまっていきます。また、簡単な業務しか任せてもらえず、やりがいのある仕事ができない場合、仕事そのものへのモチベーションが低下してしまいます。

そして子どものいない女性従業員も、先輩ワーキングマザーを目にし、子育てと仕事を両立する姿を想像することができず、モチベーションを失います。

3-2.企業に与える影響

ワーキングマザーへの影響のみがクローズアップされますが、実は企業にも影響があります。

●女性従業員の離職
マミートラックによる不満がたまり、離職する女性従業員が増えます。これにより、優秀な従業員や子育て終了後に活躍できるポテンシャルを持つ従業員を逃してしまいます。
また、そのような扱いを受けている女性上司をみた人が、昇進を嫌がったり、自分にも同じ結末が待っているのではないかという心理状態に陥る危険性があります。

●男性中心の職場
管理職が男性中心になり、職場全体が男性中心の文化になっていきます。その結果、優秀な女性従業員の活用がうまくいかなくなり、離職が増えるだけでなく、優秀な人材の採用が難しくなります。偏った社風となり、イノベーションも生まれにくくなります。現代社会から求められているダイバーシティ&インクルージョンな職場とはかけ離れてしまいます。 

4.マミートラックが起きた時にできること・対応策

4-1.個人で取り組む対応策

●コミュニケーションをとる
自分が管理職や責任ある仕事をしたいにも関わらず、マミートラックに陥ってしまった場合、上司や周囲の人とよく話し合うことが大切です。自分の状況について詳しく説明し、仕事への意欲等を話すことで、上司も理解してくれる可能性があります。

●キャリアを長期的に考える
マミートラックに陥るのは今だけと考え、子どもとの時間を選ぶのも一つの手です。子どもに手がかからなくなったら、再度仕事にフォーカスすることもできます。入社から退職まで一般的に働く期間が数十年あるので、キャリアを長期的に見ることで、一時的な感情での退職を防ぐことができます。その判断が長期的に見ていいか、じっくり考えることが必要です。

●家族の協力を得る
働きながら仕事をするには、家族の協力が不可欠です。家族の協力体制をアピールすることで、会社からの理解を得られやすくなり、マミートラックにを回避することができます。そして何より、ワーキングマザーの負担を減らし、男女関わらず家庭に参加することは、今の日本社会で必要とされていることです。

●転職
会社の理解や協力がまったく見込めない場合、転職も一つの選択肢になります。スキルを評価してくれる、より働きやすい環境を求めて転職することで、マミートラックから抜け出すことができます。

4-2.企業がとるべき対応策

マミートラックの企業へのデメリットを考えると、対策が必須なことは一目瞭然です。ワーキングマザーも含めたすべての従業員が満足して働けるよう対応していくことで、結果的に業績の向上に繋がります。

●情報や業務の属人化を無くすためのITツールとしくみを導入
子どもの体調不良などで従業員が休んだり、早退せざるを得ない状況でも対応できるよう、ITツールと仕組みを導入することは非常に有効です。子育てだけでなく、介護、体調不良など、すべての従業員のリスクを回避するためにも、非常に重要な対策です。

●成果による評価
労働時間や出勤日数ではなく、成果で従業員を評価する制度を導入しましょう。そうすることで、従業員の業務効率も向上し、全社的に向上心の高い集団へと変化していきます。

●定期的な1on1ミーティングの実施
従業員の状況や本音が聞き出せるよう、定期的な1on1ミーティングを設定します。問題の早期発見ができ、離職などを防ぐことに繋がります。

●リモートワークや裁量労働制、フレックス制度の導入
通勤時間をなくし、従業員の時間に余裕を持たせることができます。また、裁量労働制やフレックス制度を導入することで、子どもが寝てから仕事を再開するなど、時間に囚われることのない柔軟なワークスタイルが可能になります。「成果による評価」と合わせて導入したい施策です。

●従業員幸福度を向上させる
幸せな従業員が多いと、職場全体の雰囲気がよくなり、互いに協力する風土を築くことができます。ワーキングマザーだけでなく、介護やLGBTQ、外国籍の従業員など、多様な背景がある従業員への理解を深めることにも繋がります。

4-3.幸福感で差別や偏見を減らす

従業員幸福度は、会社全体の業績やエンゲージメントにも関わる重要な指数です。従業員幸福度に注目し対策をしていくことで、従業員のパフォーマンス向上ややる気促進、退職防止など、さまざまな利点があります。制度導入等と合わせて幸福度向上に向けた対策をすることで、ワーキングマザーへの偏見をなくすことができます。女性の復職支援、育児と仕事の両立ができるワークスタイル、そして女性だけでなく、すべての従業員に寛容な職場を作ることができるのです。

5.まとめ

「マミートラック」は現代日本で依然として問題となっており、女性のキャリア形成や企業の成長に重大な影響を及ぼしています。個人ではコミュニケーションや長期的なキャリア視点を持ち、企業では評価制度の改善や柔軟な働き方の導入が求められます。カルチャリアでは、マミートラック回避のための職場環境改善や制度導入をサポートします。お気軽にお問い合わせください。

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