若手を引き寄せ、会社の成長を加速させる人事評価制度の作り方
ビジネス環境が劇的に変化する中、会社の成長を支えるためには、評価制度の見直しが不可欠です。そのためには、評価方法の最適化も必要です。特に、人事部門にとって、旧来の評価制度に依存していると、若手人材の定着や育成が難しく、企業全体の競争力を損なうリスクもあります。評価基準の見直しが急務です。本コラムでは、評価制度の歴史と現代の課題、外部パートナーを活用した効率的な制度改革のメリットを詳しく解説します。また、評価制度の目的とその意義についても触れます。さらに、評価制度の設計手順も説明し、社内での導入が難しい場合の外部パートナー活用の具体的な利点も紹介します。評価制度の運用や評価者の役割分担についても詳しく説明します。貴社に最適な評価制度を構築し、企業の未来への一歩を踏み出しましょう。
・企業の成長戦略を推進するため、評価制度の見直しが必要な経営層
・評価制度の最適化や設計手順について知りたい人事担当者
・リソースが限られた中小企業で人事評価制度の設計に悩んでいる方
💡こんな方におすすめです!
目次
1.現代における人事評価制度の課題
この章では、現代のビジネス環境において、従来の評価制度がいかにして時代遅れとなっているかを解説します。ビジネスの多様化や働き方の変化がもたらす課題、そして若手人材が何を評価制度に期待しているのかを明らかにし、企業が抱える問題点を浮き彫りにします。
1-1.ビジネス環境の変化が人事評価制度に求めるポイント
現在の会社は、急速に変化するビジネス環境に対応するため、従来の評価制度では対応しきれない新たな課題に直面しています。最新のトレンドに合わせた評価制度の導入も重要です。リモートワークやデジタル化、さらには多様な働き方の普及により、人事部も従業員の業績やスキル、貢献度を適切に評価するための基準や評価項目の見直しを求められています。
リモートワークが増加する現代では、目に見えない業務プロセスやチーム貢献度を評価することが難しいです。従来の成果主義だけでは、社員の成長過程やスキルの向上を把握しにくく、特に長期的な人材育成が難しいというデメリットがあります。
特に、中小企業においても、若手の採用やリモートワーク・非正規雇用者の増加に対応するための新しい評価制度の作り方が必要です。従業員の柔軟な働き方に対応しつつ、業績や貢献度を正しく評価することが、企業の成長に直結します。人事部門もこの変化に迅速に対応し、評価基準の見直しに取り組むことが求められています。
1-2.若手人材が求める「透明性」と「成長の実感」
現代の若手人材は、評価制度に対して高い透明性と公平性を求めています。従来の年功序列型の評価や、一方的なフィードバックに対して不満を持つ若手社員は増加していますが、この問題に対する解決策も必要です。特に、自分の成長やキャリアパスが明確に見えない評価制度では、退職のリスクが高まります。
ここで求められるのは、社員が自らの成長を実感できる評価制度の作り方です。透明な評価基準やコンピテンシーに基づいた評価が導入されることで、社員はどのスキルや行動が評価されるのかを理解しやすくなり、自己成長に対するモチベーションが高まります。また、評価項目を明確にすることも大切です。人事部門は、このニーズに応え、社員が積極的にスキルアップを図れる制度を構築することが不可欠です。
1-3.競争力低下のリスクと現行制度の限界
会社が競争力を維持・強化するためには、従業員の評価制度とその運用が企業全体のパフォーマンスに大きく影響します。しかし、旧来の成果主義や年功序列型の制度では、長期的な成長を評価しにくく、短期的な業績ばかりが評価項目として重視されがちです。この結果、特に若手社員のモチベーション低下や離職につながり、結果として企業全体の競争力が低下するリスクがあります。企業がこうしたリスクを回避し、長期的な競争力を強化するためには、評価制度を刷新し、現代のビジネス環境や従業員のニーズに合致した評価方法の設計が必要です。人事部門は、これを戦略的に実行することで、企業の未来を左右する重要な役割を果たすことになります。
2.人事評価制度の過去と未来
この章では、評価制度の歴史的な変遷を解説し、特に日本企業における年功序列から成果主義への移行のプロセスを説明します。その上で、成果主義が抱える限界を指摘し、現代に求められる新しい評価基準の必要性を論じます。これにより、なぜ評価制度を見直す必要があるのかを理解します。
2-1.日本の評価制度の進化 〜年功序列から成果主義へ〜
日本の評価制度は、時代の変遷とともに大きな変化を遂げてきました。高度経済成長期には、社員の勤続年数や年齢が評価基準となる年功序列制度が主流でした。この制度は、長期的雇用を前提とし、企業と社員の信頼関係を築く上で重要な役割を果たしています。しかし、バブル崩壊後の経済停滞やグローバル化の進展に伴い、年功序列制度の限界が明確になり、見直しが進みました。
1990年代後半には、個人の業績や成果に基づく成果主義が導入され始め、効率的な業務遂行や社員のモチベーション向上が期待されました。特に、優秀な若手社員の早期登用を可能にし、企業の競争力強化に貢献しました。しかし、成果主義にも課題があったのです。短期的な結果に偏ることで、チームワークが損なわれたり、長期的な成長が軽視されたりする問題が発生しました。また、評価基準の曖昧さや不透明なプロセスに対する不満もあり、社員のモチベーションが低下するリスクも存在しました。
このような背景から、現在では、成果主義と年功序列の長所を組み合わせたハイブリッド型評価制度が模索されています。特に、成果だけでなく、そのプロセスや努力も評価する「プロセス評価」が注目されています。これにより、社員一人ひとりの成長や能力が正当に評価され、バランスの取れた評価が可能になります。また、新たに取り入れられた「コンピテンシー評価」では、従業員が持つスキルや行動特性を基準に評価が行われ、長期的なキャリア形成を支援します。この制度により、個人の能力を引き出し、企業全体の成長を促進することが期待されています。
2-2.成果主義の限界とプロセス評価の必要性
成果主義は、社員の業績や目標達成に基づいて評価を行う制度として広く採用されてきましたが、その反面、いくつかの限界も指摘されています。最大の問題は、短期的な成果に重点を置くあまり、長期的な成長やチームワークが軽視されがちな点です。特に、競争が激化し、協力的な企業文化が損なわれることもあります。
また、全ての業務に対して成果主義が適用できるわけではありません。たとえば、研究開発やクリエイティブ業務など、短期間で目に見える成果が現れにくい分野では、成果主義に基づいた評価が難しいケースがあります。加えて、プロセスや努力が評価されないことにより、社員のモチベーション低下も引き起こされる可能性があります。
こうした背景から、近年ではプロセス評価の重要性が増しています。プロセス評価は、目標達成のために行った努力や工夫、そして業務の進行状況を評価する制度です。これには、チームワークや問題解決能力、業務プロセスでの工夫も含まれます。この評価方式により、成果だけでなく、社員が目標達成に向けた成長過程も正当に評価されるため、社員のモチベーション維持や成長促進が期待できます。
プロセス評価の導入によって、個人の成長を支援し、チームの協力を促進する効果が見込まれます。これにより、短期的な成果だけでなく、持続的な成長とチーム全体の連携を重視したバランスの取れた評価制度が実現します。
2-3.ミッション・ビジョン・バリューの達成度を含んだ人事評価制度
最近の企業の評価制度では、ミッション・ビジョン・バリュー(以下、MVV)を従業員がどれだけ実践できているかを評価基準に取り入れる動きが増えています。これは、企業の方向性や価値観を浸透させ、社員の行動を統一するための有効な方法として注目されています。
MVVを評価基準に含める意義
ビジョンは企業の長期的な目標を示し、ミッションは企業が果たすべき社会的役割や使命を表します。バリューは、企業が大切にする価値観や行動基準を示しており、これらを社員が日々の業務の中でどれだけ体現しているかを評価することで、企業文化の浸透を図ります。
MVVを評価に取り入れることで、社員は自身の行動が企業の目標や価値観とどれだけ一致しているかを常に意識し、結果だけでなく行動の質やプロセスにも焦点を当てるようになります。これにより、社員は単に業績を追うだけでなく、企業全体の方向性に貢献する行動を取るようになります。
MVVを評価に含めるメリットとして、次のようなことが挙げられます。
企業文化の浸透
MVVが評価の一部として明示されることで、社員は企業の価値観や方向性を理解し、行動に反映しやすくなります。これにより、組織全体が一貫した目標に向かって動きやすくなり、企業文化が強化されます。
モチベーション向上
社員は自分の業務が企業のビジョンやミッションにどれだけ貢献しているかを実感できるため、モチベーションが高まります。z特に、組織の目標達成に貢献していることが明確になると、エンゲージメントも向上します。
行動の一貫性
MVVを評価基準に組み込むことで、社員が業務中に一貫性のある行動を取るようになります。例えば、「顧客志向」や「革新性」をバリューに掲げる企業では、顧客対応や新しいアイデアの提案が評価に組み込まれ、結果として会社全体の競争力が高まります。
3.旧来の人事評価制度が抱えるリスク
この章では、旧来の評価制度が現代の若手人材の期待にどのように応えられないか、そしてその結果として企業がどのようなリスクを抱えているかを解説します。また、若手人材が求める評価基準に対応することが、企業の採用競争力をどのように向上させるか、さらにその成功事例についても触れます。
3-1.旧来の人事評価制度と若手人材の期待のズレ
旧来の年功序列や成果主義の人事評価制度では、特に若手人材が求める透明性やフィードバック文化が欠如しており、彼らの期待に応えることができません。多くの若手社員は、自分の成長が評価されていないと感じた場合、すぐに転職市場に流出する傾向があります。若手人材は、明確な評価基準やキャリアパスを求めており、会社がこのニーズに応えられる人事評価制度を整備しなければ、優秀な人材の流出を防ぐことができません。現行の人事評価制度とのギャップを埋めるためには、人事部門と経営層が協力し、企業全体で評価基準の見直しが不可欠です。
3-2.人事評価制度の改定が採用競争力を高める
現代の採用市場では、給与や待遇だけでなく、人事評価制度も企業選びの重要な要素になっています。特に若手人材は、自身の成長を支援し、正当な評価をしてくれる会社を求めています。企業がこのニーズに対応することで、採用競争力を大幅に向上させることが可能です。コンピテンシー評価やプロセス評価を取り入れることで、企業は従業員の成長を重視する姿勢をアピールでき、優秀な人材を引きつけることができます。特に、従業員がキャリアアップの明確なステップを見出せるような人事評価制度が整っている企業は、他社と差別化され、競争力を高めることができます。
3-3.成功事例 〜改革に成功した企業の実例〜
旧来の人事評価制度を見直し、成功した企業の事例は多くあります。例えば、あるIT企業では、評価基準をコンピテンシーに基づいたものに変更し、従業員のスキル開発と長期的な成長を促進しました。その結果、若手社員の定着率が向上し、離職率が大幅に低下しました。また、別の製造業では、プロセス評価を導入することで、チーム全体のパフォーマンスを向上させ、長期的なプロジェクトにおいても成功を収めています。このような事例は、人事評価制度の改革が企業全体の成功につながることを示しています。これらの事例は、人事部門が制度を見直す際に参考にできるポイントを多く含んでいます。
4.評価制度設計の手順
この章では、人事評価制度の設計手順について詳しく解説します。社内で人事評価制度を設計するステップを説明し、もし社内で設計が難しい場合には外部パートナーに委託する選択肢もあること、そして外部に委託することによる具体的なメリットを紹介します。
4-1.評価制度設計の手順
人事評価制度の設計は、単に評価項目を定めるだけではなく、会社全体の戦略と一致する仕組みを作ることが求められます。以下は、評価制度を設計する際の基本的な手順です。
◆企業の目標と戦略の明確化:まず、企業が目指す目標や戦略を明確にします。評価制度は、企業のビジョンやミッションに基づき、従業員がどのような貢献をすべきかを明確にすることが重要です。特に人事部門と経営層の協力が不可欠です。
◆評価項目の設定:次に、社員のどの部分を評価するか、具体的な評価項目を設定します。これには、業績やスキル、行動、チームへの貢献などが含まれます。コンピテンシーを基にした評価や、プロセス評価もここで考慮します。
◆等級と報酬体系の整備:従業員を評価する際に、役職やスキルレベルに応じた等級を定め、それに基づいた報酬制度を整備します。これにより、公正な評価が可能となり、社員は自分のキャリアパスを明確に描けるようになります。
◆評価制度のトライアル運用:評価制度は、一度に全社員に適用するのではなく、まずは一部の部門やチームでトライアル運用を行い、その効果や課題を見極めます。この段階でのフィードバックが、制度の改善に大いに役立ちます。
◆全社導入と定期的な見直し:トライアルの結果を基に評価制度を微調整し、全社導入を行います。また、評価制度は一度導入して終わりではなく、定期的に見直しを行い、企業の成長や市場の変化に合わせて改定することが重要です。
4-2.社内設計が難しい場合は外部パートナーを活用
評価制度を社内で設計するのが難しい場合や、専門的な知識が不足している場合、外部パートナーに委託することは非常に効果的な選択肢です。特に中小企業では、人事部門が少人数であることが多く、評価制度の設計に十分なリソースを割けないケースが少なくありません。外部パートナーを活用することで、専門的な知識と豊富な経験を持つプロフェッショナルが制度設計をサポートし、効率的かつ効果的な導入が可能になります。
4-3.外部パートナーを活用するメリット
外部パートナーを活用することには多くのメリットがあります。まず、専門知識と経験を持つプロフェッショナルが関与することで、評価制度の設計がより効果的かつ効率的に進められます。外部パートナーは最新の業界トレンドやベストプラクティスに精通しており、これを活用することで企業独自のニーズに合った最適な評価制度を構築できます。
次に、第三者の視点を取り入れることで、社内では気づきにくい問題点や改善点を明らかにすることができます。外部パートナーは客観的な立場から評価制度を分析し、公平かつ透明性の高い評価を実現するための提案を行います。これにより、社員の信頼を得やすくなり、評価制度に対する納得感が高まります。
また、外部パートナーを活用することで、社内のリソースを節約できる点も大きなメリットです。評価制度の設計や運用は時間と労力を要するタスクであり、これを専門家に任せることで、社内の人材は本来の業務に集中することができます。特に中小企業やスタートアップにとっては、外部パートナーのサポートは非常に有効です。
さらに、外部パートナーは最新のテクノロジーやツールを駆使して評価制度を強化することができます。デジタルプラットフォームやAIを活用した評価システムの導入により、データの収集・分析が容易になり、より精度の高い評価が可能となります。これにより、評価プロセスの透明性と効率性が向上し、社員のモチベーションアップにもつながります。
最後に、外部パートナーは評価制度の継続的な改善をサポートします。評価制度は一度設計したら終わりではなく、ビジネス環境の変化や社員のニーズに応じて常に見直しが必要です。外部パートナーは定期的なレビューを実施し、必要な改善策を提案することで、評価制度が常に最新かつ最適な状態で運用されるよう支援します。
以上のように、外部パートナーを活用することで、評価制度の設計・運用がスムーズに進み、企業全体のパフォーマンス向上に寄与することが期待できます。
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5.人事評価方法の種類
この章では、経営者や人事担当者が知っておくべき評価制度に使われる評価方法の種類について解説します。OKRや360度評価、コンピテンシー評価など、最新の人事評価制度の導入メリットと、導入成功の実例を紹介します。
5-1.OKR
OKR(Objectives and Key Results)とは、目標(Objectives)と主要な成果(Key Results)を設定し、組織全体のパフォーマンスを向上させるための評価方法です。この手法は、1968年にインテルの共同創業者であるアンディ・グローブによって導入され、その後、GoogleやLinkedInなどの企業で広く採用されています。
OKRの最大の特徴は、明確で具体的な目標と、それに連動する定量的な評価項目を設定する点にあります。目標は組織全体のビジョンや戦略に基づいて設定され、社員一人ひとりがその達成に向けた具体的な行動を取ることが期待されます。主要な成果は、目標が達成されたかどうかを客観的に評価するための具体的な指標であり、通常は数値や期限を伴います。
OKRのメリットの一つは、透明性の高い評価制度を提供する点です。社員全員が組織の目標と自分の役割を明確に理解し、自己のパフォーマンスがどう評価されるかを予測しやすくなります。また、目標と成果を定期的に見直すことにより、柔軟に戦略を調整したり、迅速に行動を修正したりすることが可能です。これにより、組織全体の一体感が醸成され、社員のモチベーション向上にもつながります。
さらに、OKRはチーム間の連携を強化する効果もあります。各チームが自分たちの目標を達成するために他のチームと協力し合うことで、組織全体が一つの方向に向かって進むことができます。この相互協力のプロセスは、組織のシナジーを最大限に引き出し、より高い成果を生み出すことに寄与します。
ただし、OKRの導入にはいくつかのデメリットも存在します。まず、適切な目標設定が難しいことです。目標が曖昧であったり、過大であったりすると、社員のモチベーションが低下する可能性があります。また、定期的なレビューとフィードバックのプロセスを適切に管理するためには、リーダーシップの強いコミットメントが必要です。
総じて、OKRは現代のビジネス環境において効果的な評価方法の一つとして注目されています。この手法を適切に活用することで、組織全体のパフォーマンスを向上させ、持続的な成長を実現することが可能です。
5-2.360度評価
360度評価とは、評価対象者に対して様々な視点からフィードバックを収集し、総合的な評価を行う手法です。この手法では、上司や同僚、部下、さらには顧客など、多角的な評価者が参加します。これにより、評価対象者の業務遂行能力やコミュニケーションスキル、リーダーシップなど、多面的な項目を客観的に評価することが可能となります。
360度評価の最大のメリットは、多様な評価者が関与することで、評価の偏りを防ぎ、公平性と信頼性を高める点にあります。例えば、上司からの評価だけでは見えづらい、部下や同僚からの視点を取り入れることで、評価対象者の実際の働きぶりや人間関係の構築状況をより正確に把握できます。これにより、自己認識の向上や、改善すべき点の具体的なフィードバックが得られるため、個人の成長に繋がる効果が期待されます。
さらに、360度評価は会社全体のコミュニケーションの質を向上させる効果もあります。評価者間のフィードバックを通じて、相互理解が深まり、チーム内の信頼関係が強化されます。加えて、評価結果を基にした研修や教育プログラムの設計も行いやすくなり、組織全体のスキルアップに寄与することができます。
しかし、360度評価には注意点も存在します。まず、評価者の主観が完全には排除できないため、評価結果が偏るリスクがあります。これを防ぐためには、評価基準の明確化や評価者への適切なトレーニングが必要です。また、フィードバックの内容がネガティブすぎると、評価対象者のモチベーションを低下させる可能性もあるため、建設的なフィードバックを心掛けることが重要です。
最後に、360度評価を効果的に運用するためには、評価の透明性とフィードバックの活用方法について、評価対象者と評価者双方に理解を深めてもらうことが不可欠です。これにより、多面的な視点からの評価を組織全体の成長に繋げることができ、競争力の向上に寄与します。
5-3.コンピテンシー評価
コンピテンシー評価とは、従業員の能力やスキルに焦点を当てた評価方法です。この評価手法は、個々の従業員が持つ特定の行動特性や能力(コンピテンシー)を基準にし、仕事の成果だけでなく、業務遂行におけるプロセスや行動にも注目します。コンピテンシー評価の主な目的は、従業員の潜在能力を引き出し、組織全体のパフォーマンスを向上させることにあります。
この評価方法では、まず企業が求める理想のコンピテンシーモデルを設定します。このモデルには、リーダーシップ、コミュニケーション能力、問題解決能力、チームワークなど、業務に必要な具体的な行動特性が含まれます。次に、これらの特性に基づいた評価基準を作成し、従業員の行動やパフォーマンスを評価します。評価は通常、上司や同僚、部下からのフィードバックを交えた多面的な視点から行われます。
コンピテンシー評価のメリットの一つは、従業員が自己の強みと弱みを明確に認識できる点です。これにより、個々の成長ポイントが明確になり、自己改善やスキルアップのための具体的なアクションプランを立てやすくなります。また、企業側も従業員の育成計画や人材配置において、より戦略的な判断が可能となります。さらに、この評価方法は、公平性と透明性を高める効果があります。明確な評価基準があるため、従業員は自身の評価結果に納得しやすく、モチベーションの向上につながります。
しかし、コンピテンシー評価にはいくつかのデメリットもあります。例えば、評価基準の設定が難しい場合や、評価者の主観が入りやすい点です。これを解決するためには、評価者に対するトレーニングや、評価プロセスにおける標準化が必要です。また、評価結果をどのようにフィードバックし、次の行動に結びつけるかも重要なポイントです。
総じて、コンピテンシー評価は従業員の成長と組織の発展を同時に促進する有効な手法ですが、運用する際にはその特性と課題を十分に理解し、適切な対応策を講じることが求められます。
5-4.MBO
MBO(Management by Objectives:目標管理制度)とは、個人やチームの目標を明確にし、それに基づいて業績を評価する手法です。この評価方法は、1960年代にピーター・ドラッカーによって提唱され、多くの企業で採用されています。MBOの基本的なアプローチは、上司と部下が協力して具体的な目標を設定し、その達成度を評価するというものです。
MBOの主な特長の一つは、目標の明確化です。これにより、従業員は自分が何を達成すべきかを理解しやすくなり、日々の業務に対するモチベーションも向上します。また、目標設定の際には、SMART(Specific、 Measurable、 Achievable、 Relevant、 Time-bound)の原則に基づくことが推奨されます。これにより、目標が具体的かつ現実的で、測定可能なものとなり、評価の際の曖昧さを排除できます。
さらに、MBOは評価制度の透明性を高める効果もあります。上司と部下が目標を共有し、その達成度を定期的に確認することで、評価のプロセスがオープンになります。これにより、従業員は評価基準に対する理解を深め、公平な評価が行われると感じることができます。
MBOはまた、組織全体の目標と個人の目標を一致させることができる点でも優れています。組織のビジョンや戦略と連動した個々の目標設定を行うことで、全員が同じ方向に向かって努力する環境が生まれます。この統一感は、組織のパフォーマンスを向上させる要素となります。
しかし、MBOにはいくつかのデメリットも存在します。例えば、目標設定が適切でない場合、過度に高い目標は従業員にプレッシャーを与え、逆に低すぎる目標は成長の機会を奪います。また、目標の達成度だけに焦点を当てると、短期的な成果に偏りがちで、長期的な成長やプロセスの重要性が軽視されるリスクもあります。
MBOは目標の明確化と評価の透明性を高める効果があり、組織全体の統一感を生む優れた評価方法です。しかし、適切な目標設定とバランスの取れた評価が求められるため、導入には慎重な計画と継続的な見直しが不可欠です。
6.まとめ
本記事では、現代のビジネス環境における人事評価制度の課題と進化について、多角的に分析しました。まず、ビジネス環境の変化に伴い、人事評価制度に求められる要素として「透明性」と「成長の実感」が若手人材にとって重要なポイントであることに注目しています。
次に、日本の人事評価制度が年功序列から成果主義へと移行した歴史を振り返り、成果主義の限界に加え、プロセス評価の必要性を論じました。これに加え、企業が掲げるミッション・ビジョン・バリュー(VMV)の達成度を評価基準に取り入れることの重要性についても説明しています。
旧来の人事評価制度が抱えるリスクとして、特に中小企業については若手人材の期待とのギャップがもたらす問題を指摘し、人事評価制度の見直しが採用競争力を高める要因となることを強調しました。また、改革に成功した企業の具体的な事例を通じて、その効果を紹介し、実践的な視点からの考察も加えました。
さらに、人事評価制度の作り方や手順、評価方法の種類を詳述し、社内での設計が難しい場合には外部パートナーの活用を提案。その際のメリットや実行に伴う利点も具体的に述べています。これにより、企業が効率的かつ効果的に人事評価制度を刷新するための選択肢を提供しています。
総じて、本記事では、現代の人事評価制度の課題とその解決策について、詳細かつ包括的に分析し、企業が持続的な成長を実現し、若手人材の定着を促すための有益な洞察を提供しています。人事評価制度の見直しは、競争力を維持・向上させるための重要な鍵であり、特に若手人材の期待に応える制度設計が求められています。未来志向の人事評価制度を導入することで、企業は新たな成長のステージへと確実に進むことができるでしょう。
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