グローバル人事とは?海外進出には欠かせない国境を越える人材戦略!
日本企業の海外進出が進む中で、グローバル人事の役割はますます重要視されています。グローバル人事は、異なる文化や法制度に対応し、国際的な人材戦略を展開するポジションです。しかし、異文化理解の不足や現地人材の獲得・定着、法的規制への対応など、多岐にわたる課題に直面しています。本コラムでは、グローバル人事の役割や課題、そして課題解決のためのアプローチについて探っていきます。
目次
1.グローバル人事とは?
1-1.グローバル人事とは?
グローバル人事とは、国際的なビジネス環境で人材を管理し、組織のグローバル展開を支援する重要なポジションです。グローバル人事の重要な側面の1つは、異なる国や地域での法律や文化、商習慣、労働市場の違いを理解することです。日本企業がグローバル展開する場合、進出先の国ではそれぞれ労働法や労働文化などが日本と異なります。そのため、グローバル人事は、進出した国や地域のルールや文化を深く理解し、それに基づいた人事戦略を立てなければなりません。
1-2.グローバル人事の重要性
グローバル人事のミッションは、事業目標を達成し、コストをより効果的に管理し、また海外拠点の満足度を高めることであり、日本企業が海外進出を成功させる上で不可欠なものです。日本企業が海外進出を果たす際には、現地での法律やルール、文化、商習慣、労働市場の違いに対応する必要があります。このような環境下で人材を管理するためには、グローバル人事が異文化理解やローカライゼーション(現地化戦略)を行い、企業の海外進出を支えることが求められます。
また、グローバル人事は人材の採用や育成、人事評価、給与更改などのプロセスを効果的に管理し、組織の人材戦略を展開していきます。海外進出に伴い、現地の優秀な人材を採用し、組織の成長に貢献するためには、グローバル人事が現地の文化や商習慣などを理解しなければなりません。さまざまな違いを理解し、適切な戦略を立てないと、人材が採用できたとしても離職率が上がってしまいます。
さらに、グローバル人事はダイバーシティー&インクルージョンを促進することも重要です。異なる言語や文化を持つ従業員が集まる場合、その多様性を活かした組織文化を築き、チームの力を最大限に引きださなければなりません。例えば、異文化コミュニケーションのトレーニングや多言語対応の環境整備なども、グローバル人事の役割として挙げられます。グローバル企業が成功するためには、多様な視点やアイデアを尊重し、活用することが不可欠です。
グローバル人事は、日系企業でいういわゆる「人事部=管理部門」ではなく、売上を生み出す人事です。このようなグローバル人事による戦略により、それぞれの国や地域で競争力を持って事業を展開することに繋がります。
2.グローバル人事に求められる課題
2-1.異文化理解
異なる国や地域に進出する際には、その国や地域の文化や価値観を理解し、それに適した人事戦略を展開しなければなりません。例えば、日本と近いアジア諸国でも、価値観や労働文化や意思決定プロセスが異なります。さらに欧州と比較すると、アジア以上に異なることがあります。このような各国の違いに対応することが、グローバル人事の重要な課題です。
2-2.現地人材の採用と定着
海外進出をするにあたって、現地の優れた人材を採用し、組織に定着させることが重要です。言語や文化の違い、現地の人材獲得競争などが、採用と定着を難しくする要因です。そのため、適切な採用戦略や定着支援プログラムを作り、現地人材の獲得と定着を促進することが求められます。
2-3.海外拠点における人事制度の構築
異なる国や地域での労働法やルール、商習慣に対応し、国や地域に応じて適切な人事制度を構築する必要があります。例えば、雇用形態や労働時間、福利厚生などの制度は現地の法律に沿って見直し、整備する必要があります。これには、専門知識やリソースの確保が必要であり、グローバル人事にとって大きな課題です。
2-4.日本本社と海外拠点とのギャップ
日本本社と海外拠点との間に生じるギャップも重要な課題です。企業の掲げるミッションステートメントがなかなか海外拠点の従業員に浸透しない場合があります。このため、定期的に理念や方針の適切な伝達や共有が必要になります。また、日本企業に染みついている独特の価値観や意思決定プロセス、コミュニケーションのスタイルの違いなどが引き起こすギャップが、日本本社と海外拠点の間で課題となることもあります。
2-5.海外拠点における人事管理や人事制度の運用
各国や地域の労働法や税制に対応し、適切な人事管理や人事制度を運用することが求められます。例えば、給与に関しては社会的・経済的な背景が影響し、各国によって差があります。そのため情報の収集と分析、現地の専門家との連携、適切なシステムの導入などが必要です。海外拠点の人事管理や給与制度を含めた人事制度の課題にグローバル人事は対処しなければなりません。
3.グローバル人事を機能させるために必要なもの
グローバル人事をより効果的に機能させるために、必要な準備や取り組みについて考えていきましょう。
3-1.課題の特定と施策・ゴールの設定
海外進出する際には、その国や地域特有の文化や法律、労働市場の特性など、さまざまな課題が生じます。例えば、現地の労働法やルール、商習慣に対応すること、言語や異文化コミュニケーションの壁をクリアにすること、現地の人材獲得と教育、定着などの課題が挙げられます。まずは数多くある課題を明確にして、優先順位をつけることで、適切なタイミングで適切な対策を打つことができます。
次に、施策とゴールの設定が必要です。グローバル人事の目的は、海外でのビジネス展開を支援し、組織の成長と持続可能な競争力の確保です。目標を設定し、ゴールに向かって効果的に取り組むことが重要です。例えば、現地の優れた人材を獲得し、組織に定着させること、現地の文化や法律に則した人事制度の構築、グローバルな組織文化の確立などがゴールとして挙げられます。
さらに、ゴールを達成するための具体的な戦略の策定が必要です。例えば、異文化理解の促進や多言語対応の環境整備、現地の人材獲得のための採用戦略の構築、現地の法律や規制に適合した人事制度の整備などが挙げられます。これらの戦略は、課題の特定とゴールの設定に基づいて策定される必要があります。
3-2.会社の想いや考えを従業員に伝える
本社の掲げる理念やルール、想いの浸透具合は売上に影響を与えます。しかし海外拠点にはなかなか浸透しないという課題を抱えているグローバル人事の姿も多く見られます。例えばカルチャーブックや従業員ハンドブックなどを作成し、会社のミッションステートメントやポリシー、従業員に対する職務上の期待、会社の目標やフィロソフィを分かりやすく示します。記載する内容としては、下記のようなものがあります。
・会社の方針、価値観
・職場規定
・報酬・ベネフィット(福利厚生)
・従業員の品行
・雇用期間 など。
これは会社のポリシーを全従業員に公平に適用するためのものであり、職場環境の公正さを向上させるのに役立ちます。
3-3.報酬制度と評価制度
日本の報酬制度は一般的に年功序列や役職に応じた給与体系が主流です。つまり、従業員の年数や経験、役職に応じて給与が決まり、年次の昇給やボーナスが支給されます。一方、グローバルでは成果や能力に応じたパフォーマンスベースの報酬制度が一般的です。業績や貢献度に応じて給与が決定され、個人の成果に応じてインセンティブが支払われることがあります。
評価制度も異なります。日本では年次の業績評価や能力評価が行われ、昇進や昇給の基準となります。一方、海外では一般的に年2回の評価があり、定期的なパフォーマンスレビューや目標設定、フィードバックの文化が根付いており、従業員の成長やキャリアの発展を支援するための評価制度が導入されています。
日本と海外を比較したとき、報酬制度や評価制度は文化や法律、労働市場によって異なります。日本では年功序列や年次の評価が一般的であり、海外では成果や能力に応じたパフォーマンスベースの報酬制度や定期的なフィードバックの文化が根付いています。また、海外ではワークライフバランスや福利厚生にも重点が置かれています。このような違いを理解し、既存制度の見直しや適切な制度を導入することが、グローバル企業の成功に不可欠です。
4.グローバル人事が知っておくべき基本知識
4-1.グローバル化への3つのステップ
グローバル人事が戦略を構築、展開するためには、自社がグローバル化のどの段階にいるのかを知り、その段階に合わせたアプローチが重要です。
ステップ1:日本企業
特徴:日本人中心のグローバル経営体制
海外拠点のトップは本国から派遣された日本人社員が務め、現地社員は補助的な役割にとどまる。海外拠点の経営方針は日本の本社の動向に従う。
ステップ2:多国籍企業
特徴:本国中心のグローバル経営体制もしくは現地人主導の海外拠点経営体制
海外拠点トップの現地化が進んだ段階。海外拠点トップと現地社員の間のポジション(部長クラスなど)に本国から派遣された社員が入ってマネジメントを担う。各拠点に対する指令は引き続き、本国(=通常は発祥の国)にある本社から発せられる。
ステップ3:グローバル企業
特徴:国籍に関係なく優秀な人材が国内外の重要なポストを担う経営体制
本国と海外といった区分はなくなり、全世界の拠点から国籍に関係なく優秀な人材を登用して経営幹部のポストを任せる。グローバル本社(=必ずしも本国に所在するとは限らない)が世界中の拠点を包括的にマネジメントする。
2022年に行われた、外務省の海外進出日系企業拠点数調査によると、海外進出している日系企業拠点数は、約8万拠点でした。しかし、多国籍企業、グローバル企業に区分される企業は少なく、その多くは「ステップ1:日本企業」の形態です。真なるグローバル企業になるためには、日本型経営か現地型経営かの二者択一ではなく、グローバルで統一すべきものを共通化し、共通化できない部分をローカルで管理するというような柔軟なマネジメントが求められます。そのためには、多様化を理解できる人材の確保と育成がグローバル人事に求められる最優先事項の一つです。
日本の企業では、「研修」といえば新卒入社した新入社員向けのトレーニングに時間やコストをかけることが一般的です。新入社員は入社後に数か月にわたり、対面の座学方式でビジネスマナーや社会人としてのマインドセット、コミュニケーション、ロールプレイングなどの研修プログラムを受けます。
4-2.グローバルリーダー人材育成
グローバルリーダーの育成は、グローバル人事戦略の成功に不可欠です。グローバルな視点で海外のビジネス文化を理解し、外国人の同僚、部下、上司、顧客、取引相手と良い関係を築き、効果的に仕事をするためには、ただ語学だけを学べばよいという訳ではありません。グローバルリーダーには、グローバル人事戦略を遂行していくうえで必要な、異文化コミュニケーション力、業績マネジメントの重要性や知識、ハラスメントフリーな職場づくりなど、多国籍な環境下で異文化の壁を超えて、効果的に仕事ができる姿勢や知識、スキルの向上が求められます。
*多少異なることがあります。
上記のようなスキルや知見を身に付けることで期待される成果として下記のようなものが挙げられます。
●日本人駐在員と現地スタッフのコミュニケーションを改善し、職場環境の改善と生産性の向上を実現
●グローバルのチームと現地スタッフ間での異文化理解を深め、円滑な業務・組織運営を実現
●現地の労働法、規制、商習慣に関する深い洞察を踏まえ、効率性の向上とリスクを最小限化
このような知識や知見を持つことで、グローバル人事戦略の持続的な成功につながるでしょう。
5.まとめ
グローバル人事の重要性や課題、グローバル人事が知っておくべき基本知識などについて解説しました。
グローバル化が進む現代において、企業が持続的な成長と競争力を確保するためには、適切なグローバル人事戦略の構築が必要です。具体的には、異なる国や地域での人材管理における課題に対処し、適切な人事戦略や制度を整備すること、現地の文化や法律に適合するように人事プロセスを調整すること、組織全体での理念や方針の共有を図ることなどが含まれます。これらの課題に適切な対処法を講じるグローバル人事は、海外進出の成功を左右するキーポジションなのです。
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